社会保障

老後資金の運用方法 iDeCOとつみたてNISAのメリット・デメリット

皆さんは何か老後の対策をされていますか。老後の備えを意識したとき、まず「老後資金としていくら必要になるのか」「公的年金でいくらもらえるのか」気になるところですよね。

国民年金の満額での受取額は、2012年4月からは年額786,500円でしたが、2017年4月からは年額779,300円と受け取れる金額が減少しています。受給額はその年毎に増減しますが、支払う保険料は毎年改定され、段階的に引き上がっています。2012年の国民年金保険料は月額14,980円。2017年の国民年金保険料は月額16,490円となっています。

支払額は増えているけど、受け取れる金額が減少傾向にあることが分かりますね。残念ながら、この先も現状を維持できるとは限りません。現状をふまえると、公的年金にプラスしてご自身で老後の対策をしていく必要が出てきます。さまざまな貯蓄方法や資産形成商品がありますが、その中でも効率よく資産を増やしたいものですね。

資金対策として確定拠出年金iDeCOやNISAが注目を集めていますが、2018年からは「つみたてNISA」も始まります。ここでは、老後の資金としていくら必要になるのか、公的年金でいくら受給することができるのかを説明した上で、「確定拠出年金iDeCO」や「つみたてNISA」についてのご紹介をいたします。

■もくじ(ページ内リンク)

公的年金制度

確定拠出年金iDeCoとは

つみたてNISAとは

iDeCoと積立NISAを比較

最後に

公的年金制度

日本の公的年金制度は「国民皆年金」という形態になっており、20歳以上の方は全員国民年金に加入しています。会社員は国民年金と厚生年金などにも加入しているため「2階建て」という構造になっており、

国民年金は加入者を下記の3種類に分けています。

・第1号被保険者 自営業者など

・第2号被保険者 会社員など

・第3号被保険者 専業主婦など

この種類の違いで1階建ての方と2階建ての方がいるため、将来受け取れる年金の金額が大きく変わります。

■第1号・3号被保険者 1階建ての方は自営業者など(老齢基礎年金)

■第2号被保険者 2階建ての方は会社員など(老齢基礎年金+老齢厚生年金)

老齢基礎年金は20歳から60歳までの40年間(480月)の全期間保険料を納めた方は、満額(779,300円)が65歳から支給されます。保険料免除期間がある方は別途計算が必要になります。

自営業の方で老齢基礎年金が満額受け取れるとすると、1年間で779,300円(月約64,940円)受け取ることができます。

以前、老後資金をためる前に知っておきたい公的年や税制優遇措置制度でも紹介いたしましたが、老後に必要な最低日常生活費は夫婦で月22万円、ゆとりある生活には平均して月34.9万円とされています。

夫婦ともに老齢基礎年金を満額受け取れるとしても129,880円ですね。老後の収入があるのは有難いですが、公的年金の支給額だけでは不安ですよね。

確定拠出年金iDeCoとは

iDeCoは、個人型確定拠出年金(個人型DC)のことを言います。401kやDCという単語を聞いたことのある方も多いと思いますが、これらは全て「確定拠出年金」のことを指しています。

これまで個人型DCは、自営業者と勤務先に企業年金のない会社員しか加入できませんでしたが、2017年1月から規制緩和されたことにより、国民年金に加入している20歳以上60歳未満の方は、ほぼ全ての方が加入できるようになりました。

iDeCoは任意で加入できる国の年金で、いわばご自身で老後の資金を作る制度です。金融機関(運営管理機関)が用意している、預金や投資信託、保険などの金融商品の中からご自身で選び、運用します。

例えば「投資信託」などの金融商品をご自身で選んで、毎月掛け金を払い込みます。60歳以降に給付金を受け取ることができますが、投資なので受取金額は運用実績によって変わってきます。

※投資信託 投資家からお金を集め、専門家が株式や債券などに投資や運用をして、その利益を投資家たちに分配するしくみです。プロに運用してもらう方法ですね。

iDeCoの金融商品は保険会社や証券会社、銀行などで申し込みをすることができます。商品は1つだけでも、複数の商品を組み合わせて運用することも可能です。運用商品を変えることは可能ですが、1つの金融機関しか利用できません。金融機関はいつでも変更可能ですが、移管手続きには時間がかかったり、手数料が発生したりすることがあります。また、移管中の運用はできないので、金融機関は慎重に選ぶ必要がありますね。

メリット

iDeCo最大のメリットは、「支払い時・運用時・受け取り時」3つの税制優遇です。

①掛金全額が所得控除

毎月の掛金(支払ったお金)が全額所得控除されます。

②運用益が非課税

金融商品を運用して利益が出たら、その分の所得は課税対象となり、税金を納めなくてはなりません。しかし、iDeCoの運用益は全額非課税で、再投資をすることができます。

③受け取り時にも控除

年金として受け取る場合

「公的年金等控除」の対象となります。60歳になったら、5年以上20年以下の期間で年金を受け取ることができます。

一時金として一括で受け取る場合

「退職所得控除」の対象となります。60歳になったら、70歳になるまでの期間に一括で年金を受け取ることができます。

(60歳からiDeCoの年金を受け取るためには、iDeCoに加入していた期間が10年以上必要になります。)

受取方法は年金か一時金で受け取る方法以外にも、半分を一時金として受け取り、残りの半分を年金として受け取る方法を取り扱っている金融機関もあります。

デメリット

①受け取る金額が少なくなる可能性がある

金融商品なので、投資のリスクはつきものです。商品の運用が好調であれば受け取る年金が増える可能性もありますが、運用次第では支払い金額よりも、受け取り金額が少なくなってしまう可能性があります。

②手数料が掛かる

iDeCoに加入する際の手数料や、毎月支払う口座管理料、投資信託を選ぶ場合には信託報酬など掛かります。手数料や金額は、金融機関や商品によっても違いがあるので、必ず確認しましょう。長い期間付き合うことを考えると、金融機関選びはとても重要といえるでしょう。特にiDeCoは新しい制度なので、すぐに相談できるコールセンターがあったり、ホームページ分かりやすかったりすると、安心感がありますね。

③60歳になるまで引き出せない

「年金」なので、当然かもしれませんが、iDeCoで積み立てたお金を途中で引き出すことは、原則できません。

自分のタイミングで引き出すことができないのは、デメリットではありますが、貯蓄の苦手な方にとってはメリットでもあります。60歳までは引き出せないので、未来の自分へ確実にお金を渡すことができます。お金があると使ってしまう人にはおすすめかもしれませんね。

つみたてNISAとは

一般のNISA(小額投資非課税制度)は20歳以上の方を対象とした、年間投資上限額120万円で最長5年間(600万円)利用でき、その中で得た利益が非課税となる制度です。2018年1月からは新制度として「つみたてNISA」が始まります。

長期的な積立投資を目的としていることから、制度の内容にも現行とは異なる部分がいくつかあります。

ちなみに現行NISAとつみたてNISAは併用できないので、どちらかを選択しなければいけません。

つみたてNISAは長期に特化した積立貯金で、年間40万円を 20年にわたり積み立てることができ、最大で800万円を運用することが可能です。

投資対象商品は、長期の積立・分散投資に適した金融庁の基準を満たした投資信託と決められています。

メリット

①ドルコスト平均法を活用できる

毎月決まった金額で、継続して同じ投資商品の購入を続ける方法のことを言います。

例)「A」という商品が 100円のとき1万円を投資すると100個購入することができました。翌月は「A」が200円になっていたため、同額を投資すると50個しか購入することができません。しかし、その翌月「A」は50円になっています。同額で投資すると200個購入することができました。

このように、同じ額を一定期間買い続けることで、価格が高いときには購入する量を少なくし、低い時には多い量を購入することができるので、全体の購入単価を平均化する効果があります。また、買い逃しをすることもありません。

②少額から投資信託ができる

金融機関によって金額は異なりますが、少額の掛け金から始めることができますので、今まで投資をしたことがない方にも始めやすいですね。

③払い戻し自由

先ほどご紹介したiDeCoは私的年金制度ですので、60歳になるまで払い戻しはできません。しかし、NISAは払い戻し自由ですので、ご自身のタイミングで資金を引き出すことができます。いつでも引き出すことができると、急な出費にも対応することができます。

デメリット

①投資金額が少ない

つみたてNISAは20年間という長期運用ができる代わりに、年間で40万円までしか投資することができません。少額からの投資ができるのは、メリットではありますが高い金額で投資をしたいと検討されている方には物足りないかも知れないですね。

②繰越控除が利用できない

通常は投資で損が出た場合、確定申告をすると、最大で3年間損を繰越することができます。

繰越控除とは繰り越した年の投資で利益が出たら、そこから差し引くことができることを言いますが、つみたてNISAは、この繰越控除を利用することができません。また損益通算も利用することはできません。

損益通算とは別々の口座で投資などにより得た利益から損失を差し引くことで、利益にかかる税金を軽減する効果のことをいいますが、NISAやiDeCoは損益通算ができません。専用口座で出た損失を他の口座で得た利益から差し引くことができません。

iDeCoと積立NISAを比較

  iDeCo つみたてNISA
対象期間 2014年~2023年 2018年~2037年(予定)
投資額 月5,000円~(上限は職業により異なる)(年間上限144,000円~816,000円) 年間40万円(800万円)
運用期間 原則60歳まで 20年間
非課税対象 掛け金所得控除
運用益非課税
受け取り時所得控除
運用益非課税
運用商品 長期投資向け投資信託など 投資信託・保険商品・定期預金
換金性 60歳まで払い戻し不可 いつでも可
損益通算 できない できない

老後資産をつくるにあたりiDeCoも積立NISAも長期的に資産を運用し、税制優遇があることなどが共通点として挙げられます。

iDeCoは私的年金制度のため、60歳になるまではお金を引き出すことができません。しかし「老後資産の構築」という点で考えると、デメリットばかりではありません。ご自身から資産を守る目的で検討されるのも一つの手ではないでしょうか。

また、つみたてNISAでは最大20年間投資をすることができますが、自由にお金を引き出すことができますので、教育資金やマイホーム購入に充てるための貯蓄として始めることもできますね。

iDeCoとつみたてNISAは併用することができますので、どちらも活用されるというのも検討してみてはいかがでしょうか。

最後に

資金の目的といつごろ必要になるのかによっても、選び方は変わってきます。

国の政策により、ご自身の判断で老後の準備をするための商品がどんどん登場してきています。国の年金制度だけではなく、これからは自助努力が必ず必要となります。数ある老後資金の運用方法の中から、ご自身に合った方法を選べるといいですね。

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この記事を書いた人

奥寺 佳彦

株式会社アイ・エフ・クリエイト

日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー(AFP)