社会保障

【老後資金の必要額】公的年金から考えるシミュレーション方法

楽しく穏やかな老後を過ごすために、老後資金は欠かせません。公的な年金だけでは不足してしまうことは分かっていても、「果たして自分がどれくらいの余裕資金を準備すれば良いのか」という具体的な金額はぼんやりとしている方も多いと思います。

各媒体では「老後資金として3,000万円は必要」「1億円あれば困らない」などと、さまざまな意見が飛び交っていますが、本当にそれほど多額の老後資金を必要とするのでしょうか。ここでは老後資金が3,000万円必要と言われている根拠や、ご自身に必要な老後資金をざっくりとシミュレーションするための計算方法などをご紹介していきます。

■もくじ(ページ内リンク)

老後資金とは?

「老後資金のモデルケース=3,000万円」の内訳

公的年金制度のしくみ

必要な老後資金のシミュレーション方法

最後に

老後資金とは?

老後資金は一般的に「退職してから亡くなるまでの生活を賄うための資金」を指します。収入が減少してから亡くなるまでの期間、余裕を持って過ごしたいものですね。

老後は公的年金が収入のメインになるかと思いますが、残念ながら給付される年金だけでは足りません。

基本的な考え方としては「老後に必要な生活費+ゆとりのための金額-老後の収入(公的年金など)=老後資金」として必要額を算出するのですが、そのうちの主な支出は以下のものが挙げられます。

① 家賃・光熱費などの費用や、食費・日用品などの生活費

② 医療費や住居・車の維持費

③ 趣味や旅行といった娯楽費、冠婚葬祭などの費用

これらを事前に準備して老後の金銭的な心配をすることなく、円滑に老後生活が送れるよう準備することが目的です。

しかし上記の計算式に当てはめて求める際には、持ち家または賃貸のどちらに住んでいるかによって金額は異なり、②や③でもそれぞれの環境や、求める娯楽の範囲で金額は大きく変わってきますよね。

また、亡くなるまでの期間によって、必要資金は変わってきますので日本人の平均余命を知る必要があります。

長く生きれば生きるほど必要な保障額が多くなり、これを長生きリスクと呼んでいます。リスクを把握して必要な保障に備えましょう。

厚生労働省が公表している平成28年簡易生命表によると、65歳時の平均余命は男性が19.55年、女性が24.38年となっています。つまり、平均して65歳から男性は約20年、女性は約24年生きるということになりますね。

それでは一般的な「老後資金=3,000万円」とは、どのような内訳による目安となっているのでしょうか。

「老後資金のモデルケース=3,000万円」の内訳

一般的に言われる3,000万円という数字は、「現役時代にサラリーマンだった夫婦二人世帯」をモデルケースとして、平均の公的年金月額23万円、ゆとりある老後生活費が約38万円、60歳の定年後から活動的な70歳または75歳までの期間という条件のもとで必要な生活費をざっくりと計算し、予備費も含めたものとして多く知られている数字ですね。

しかし現代では、公的年金の平均受給額は会社員でおよそ月15万円、自営業者で月5万円となっており、老後の生活費としての平均額も月22万円、ゆとりある老後生活費では平均35万円(最低日常生活費以外に平均12.8万円)とされていますので、上記のモデルケースとは金額に誤差が生じているのが現状です。

時代とともに平均寿命が延びていることを考えると、活動的な期間としてももう少し長くみておいたほうが安心かもしれませんね。

公的年金制度のしくみ

必要な老後資金を検討するためにも、まずはご自身がどのくらいの年金を受け取ることができるのか把握することが大切です。

みなさんは「1階建て」「2階建て」というのは聞いたことがありますか?

老後資金の運用方法 iDeCoとつみたてNISAのメリット・デメリットのページで、公的年金制度のしくみについて書いていますが、日本の公的年金制度は「国民皆年金」制度となっており、20歳以上の国民は皆国民年金に加入しています。

自営業者などの第1号被保険者は国民年金のみですが、会社員などは第2号被保険者と呼ばれ、国民年金と厚生年金に加入しています。

このような加入する年金の種類の違いが、いわゆる1階建て、2階建てと呼ばれているのです。

加入している年金の種類が異なるため、もちろん受け取れる年金の額にも違いが出てきます。

必要な老後資金のシミュレーション方法

それぞれの老後資金をシミュレーションするために、目安となる平均金額や期間をまとめてみましょう。

公益財団法人生命保険文化センターの調査データによると、夫婦で老後に必要な最低日常生活費は月22万円と言われており、公的年金としての平均受給額は、厚生年金加入者は男性ではおよそ年額200万円、女性では120万円程度の方が多いといわれています(基礎年金と厚生年金の合計額)。

月額にすると男性は16万円、女性は10万円となり、夫婦合わせて26万円支給される計算になります。

自営業者などの国民年金のみ加入されていて、満額で受け取ることができる方は、年額779,300円(平成29年度時点)の支給があります。

夫婦二人で国民基礎年金を満額受け取れる場合は、年額1,558,600円、月額にすると夫婦二人で129,800円となります。

上記の金額はあくまでも全体としての平均額ですので、加入している年金の種類や単身なのか夫婦二人なのかによっても目安金額は異なってきます。

下表では、一例として世帯によって異なる受給金額を計算していますので、目安としてご覧ください。

※老齢厚生年金の受給額は、厚生年金に加入中の月給や賞与、加入期間によって異なります。

平均年収 厚生年金 会社員(厚生年金+国民年金) 自営業者(国民年金)満額
夫:500万円
妻:300万円
厚生年金加入期間:夫婦ともに40年間
夫:9.1万円/月(110万円/年)
妻:5.5万円/月(66万円/年)
27.6万円/月(331.2万円/年) 13万円/月(156万円/年)
単身:500万円
厚生年金加入期間:40年間
9.1万円/月(110万円/年) 15.6万円/月(187.2万円/年) 6.5万円/月(78万円/年)
夫:700万円
妻:300万円
厚生年金加入期間:夫40年・妻16年
夫:12.8万円/月(153万円/年)
妻:1.4万円/月 (16万円/年)
27.2万円/月(326.4万円/年)

(年額は1万円未満四捨五入、月額は千円未満四捨五入の金額)

支出項目 支出金額
夫婦世帯の平均生活費 ゆとりある生活資金35万円/月
単身世帯の平均生活費 ゆとりある生活資金17.5万円(夫婦世帯35万円から仮定)
平均寿命からの老後期間 男性81歳、女性87歳
収入試算:65歳から87歳までのおよそ22年間
支出試算:60歳から87歳までの27年間

 「老後の生活費+その他の出費-老後の収入(公的年金など)=老後資金」

【夫婦ともに会社員世帯の例(厚生年金加入期間は夫婦ともに40年)】

★支出: 35万円×12ヵ月×27年間=11,340万円

★収入:約27.6万円×12ヵ月×22年間=7,286.4万円

★必要な老後資金:11,340万円-7,286.4万円=4,053.6万円

【会社員の夫・16年会社勤務後、専業主婦の世帯の例(厚生年金加入期間は夫40年、妻16年)】

★支出: 35万円×12ヵ月×27年間=11,340万円

★収入:約27.2万円×12ヵ月×22年間=7,180.8万円

★必要な老後資金:11,340万円-7,180.8万円=4,159.2万円

【会社員の単身世帯の例】

★支出:17.5万円×12ヵ月×27年間=5,670万円

★収入:約15.6万円×12ヵ月×22年間=4,118.4万円

★必要な老後資金:5,670万円-4,118.4万円=1551.6万円

【自営業者の夫婦世帯の例】

★支出:35万円×12ヵ月×27年間=11,340万円

★収入:約13万円×12ヵ月×22年間=3,432万円

★必要な老後資金:11,340万円-3,432万円=7,908万円

【自営業者の単身世帯の例】

★支出:17.5万円×12ヵ月×27年間=5,670万円

★収入:約6.5万円×12ヵ月×22年間=1,716万円

★必要な老後資金:5,670万円-1,716万円=3,954万円

これらの一例はあくまで目安ですが、計算式にあてはめた結果を見ると、老齢基礎年金(国民年金)のみを受け取る場合、用意しなくてはならない老後資金が最も大きいです。自助努力による老後資金の補てんが必須であることがよく分かりますね。

平均寿命以上に長生きした場合には、さらに老後資金が必要となります。

なお、計算には負債(住宅ローンなど)や一時所得(退職金など)は含まれていません。ご自身の背景を加味しながら、それぞれに適した必要な老後資金を算出してみてください。

老後の衣食住の確保や、安心して医療機関を受診できる環境を確保しておきたいものですね。

最後に

3,000万円の金額の根拠とは?老後資金のシミュレーション方法、についてのまとめはいかがでしたでしょうか?

公的年金だけで、老後に必要なお金をまかなうことはできません。老齢基礎年金(国民年金)の受給額は毎年見直しがされていますので、この先受給できる金額が減ってしまう可能性があり、国からも自助努力を呼びかけられています。

このことからも老後にしっかりとお金を残すために、資産形成することが大切です。NISAや確定拠出年金(iDeCo)、個人年金保険などを利用して早いうちから、ご自身で用意する必要があります。

個人年金保険をご検討の方は生命保険比較サイト「i保険」個人年金保険のページをご覧ください。

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この記事を書いた人

奥寺 佳彦

株式会社アイ・エフ・クリエイト

日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー(AFP)